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「しゃべりまくれ」 ポエトリーカフェ参加の記 第3期の3(小熊秀雄)

 トマトとサーモン、それにクリームチーズという取り合わせがみごとにまとめられた、ポエカフェ特製フード。その味は、小熊の故郷、北の大地を思わせるさわやかな風を感じさせるものだった。しかし、今回取り上げられた詩人、小熊秀雄の詩は、本人が「しゃべり捲くれ」という詩を書いているように、まさにこれでもかと、しゃべりまくるものだった。その世界をPippoさんは「過剰すぎる」とも。Pippoさんは、その過剰な秀雄の詩を読んで「愛される感」を感じたと語っておられたが、会場は、いつのまにか秀雄の「しゃべりまくれ」というエネルギーに圧倒されていたように、今振り返って思う。

 28日にKAKKAcafeさんを会場に開催されたポエカフェ小熊秀雄篇は、新しい方5名?ほどを含む20名の参加だった。秀雄のしゃべりまくれエネルギーを予感させるかのように自己紹介だけで1時間かかるという形で始まったポエカフェ。しかも、紹介される詩の多くが長いもの。恒例の朗読くじで皆で朗読して行くが、それだけでどんどん時間が過ぎて行く。途中休憩のとき、周囲の方と「終われるか?」と話す。やや時間を超過しながらも、なんとか終了した。

 今回のポエカフェは、参加しながら、どこかいつもと違う感覚があった。それは、時間が足りなそうだということからではない。現場では、その感じがどこから来たのか分からなかったが、今思うに、秀雄の「しゃべりまくれ」のエネルギーが、参加者の一人一人に、挑戦するかのように覆い被さっていたからのようだ。恋愛詩篇からにして、過剰さは覆えない。「最初の微笑と最初の手」が室生犀星の「永久の友」と並べられていたが、一読瞭然?といえるほどの違いがある。「人生の雑種として」をUさんが朗読したときには、この詩はアジってるという発言があったが、その読む者を巻き込もうとする勢いは、そう感じられても不思議でないように思う。

 その過剰なまでのエネルギーに、どう読んでいいのかとまどいもあったのではないかと思う。そのせいか、本編終了後の2次会では、小熊叩きがあったという噂も…。残念ながら、そこに参加できなかったが、聞いてみたかった。ちなみにPippoさんはプチ擁護だったそうだ。

 ポエカフェ後も、秀雄を読みつづけたが、あるとき、ふと思ったことがある。しゃべりまくる秀雄。彼の詩には、読みまくることを求めるかのようないきおい(リズム)があること。しゃべりまくる小熊に向き合う時、それが求められているのではないかと。こせこせと考える前に読みまくって受けとめろ、理屈ではないという声が聞こえたような気がした。それとともに、声に出して読もうとする時、多くの詩が、ゆっくり読むのを拒絶しているようにも感じた。畳み掛けるように読むことが求められているように、そのリズムが迫ってくるのだ。

 プロレタリア詩と出会い、「詩精神」に参加することで、いっきに詩を量産するようになったという秀雄。しかし、自分が読んだ範囲ではあるが、秀雄の詩は、既存のイデオロギーに乗っかるというのではなく、一人の弱い立場にいる人間として、しゃべり捲ったように感じている。それは、結果としてアジテーションとも聞こえるのかもしれない。
 朗読くじで「地球の中にもう一つの地球がある」があたった。くじの裏に『既存世界への抗議」とメモしている。小熊の中にあった、一つの世界。それをしゃべりまくることで表現しつつけたのではないだろうかと思う。特別な力を持たない、いや、むしろ弱い立場にある一人の人間として、ごく当たり前に生きようとすることの前に立ちはだかる様々な障害。それを前にするとき、しゃべられずにはおられない秀雄だったように感じた。

 それにしても、小熊の詩は長いものが多い。あえて長編叙事詩に挑戦もしている。『飛ぶ橇』と題された長編叙事詩集を昭和10年に出している。そこにとりあげられている題材がとても興味深い。今回紹介された『移民通信』もルンペンが主人公だ。この系列の詩が、どのように発展していったのかと思うと、残念な気がする。

 そんな、しゃべりまくる秀雄の過剰さの中で、ちょっと異色な「文壇諷刺詩篇」に、何人かの方がもっと読みたいと反応されていた。この作品に対する評価は人によって異なるようだが、わたしも他の作品との関連で、どう位置づけられるのか、秀雄がどのような思いで発表したのか、気にかかるところだ。

 池袋モンパルナスでの生活のことや画のこと。今回取り上げきれなかった部分がかなり残っているように思う。ポエカフェが終わっても、興味はつきない。できればもう1回取り上げてほしいと思わせる小熊秀雄だった。

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