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「不思議な力」 ポエトリーカフェ参加の記 第3期の6(山之口貘)

 第3期の会場を提供してくださっていたKAKKAcafe さんでのポエカフェも今回が最後。KAKKAさんのセンスが光る、美味しい特製フードともお別れと思うと、とてもさびしい。これまで、ほんとうにありがとうございました。

 今回取り上げられたのは、山之口貘。通称「貘さん」。「さん」づけで呼ばれる詩人は珍しいのではないだろうか。なぜ?そんな疑問も抱えながらの参加。新しい方も5人?加わり、Pippoさんの近代詩人伝道師の実力をあらためて実感。恒例となった、詩人にまつわるお題での自己紹介。今回のお題は「貧乏ないし野宿体験」。16年間、住まいをもたなかった貘さんにちなんだもの。ポエカフェ本編の前のこの時間が、実はけっこう面白い。参加者の人となりが、垣間見える時間だ。それにしても、今回のこの時間、けっこうインパクトがあった。

 そんなインパクトの強い時を経て、貘さんの詩と生涯が紹介されていく。16年間畳の上で寝なかったという、すさまじい貧乏生活。さまざまな職を転々としながら、その経験も詩を生み出す力となっていく。そんな貘さん。佐藤春夫から身元保証の特製の名刺をもらったという。そんなところに、彼の人柄が見えてくる。

 ところで、どこかいつもと違うなと感じつつ時間が過ぎていった。結婚願望についてのつっこみはあったものの、意外と静かに会は進んでいった。これだけの貧乏生活、その中での結婚とくれば、つっこまれる材料はけっこうありそうなのだが、気がつくと、詩を朗読しながら、時間はあっという間に過ぎていっていた。

 貘さんの詩ことばが、今回のポエカフェを支配していたのだろうか。参加者の中に沖縄で貘さん関係の資料を集めて来られた方がおられた。貘さんの手書き原稿のコピーを見せていただく。きっちりと、少し小さめの字で几帳面に書かれた原稿。その原稿の背景には、ときには1篇に200枚とも言われる保古原稿がある。沖縄県立図書館では、その保古原稿の束も見られるとのこと。そんな話を聞きながら、貘さんの詩への思いを考えていた。

 難しいことばは使われていない貘さんの詩。時には声に出すと早口言葉のようで、笑い出したくなるものさえある。しかし、気がつくとそのことばに込められた、貘さんからの問いかけにいつの間にか直面させられている。今回取り上げられた詩の中に『存在』という題がつけられたものがある。「僕らが僕々言ってゐる/その僕とは、僕なのか」と始まり、「僕」ということばが19回も出てくる。まさに早口言葉のようなのだが、そこから「僕の言ってることが分かるかい」という貘さんの声が聞こえてくるようだった。

 恒例の朗読くじでは『妹へおくる手紙』があたった。ポエカフェ前の予習で読んだ時から、この詩が気になっていた。くじであたったとき、これが来たかと、いささか戸惑った。妹からの手紙になかなか返事を書けず「ミナゲンキカ」とだけ書いたという詩。放浪生活を続けている貘さんの手許に届いた妹からの手紙。それを題材にしての詩。具体的に書けないことを続けた後で「如実的な一切を書けなくなって/とひつめられてゐるかのように/身動きも出来なくなってしまい 満身の力を込めてやつとのおもいで書いたのです」とある。この詩に込められた貘さんの思いをあらわすことばを今も見つけられないでいる。

 貘さんのことばに向き合うとき、ことばの背後にあるエネルギーとでもいったものに、圧倒される。ポエカフェを前にして全集の第1巻におさめられた詩を読み進むうち、生半可な姿勢では、貘さんの詩に向き合えないと感じ始めていた。読む人に、そっと差し出されながらも、不思議な力をもって迫ってくるのが貘さんの詩のような気がしている。その不思議な力に支配されていた、今回のポエカフェだったように思うのだ。

 貘さんの詩、それは私にとって厳しい詩とも言えるものだ。じっくり時間を使って味わいたい詩人に出逢えたポエカフェだった。

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