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「忍従の生活の中から」 ポエトリーカフェ参加の記 第3期の10(新美南吉)

 Pippoさん主催のポエカフェもついに第3期のファイナルとなった。近代詩伝道師としてのPippoさんの活動も、ラジオや新聞などいろいろと広がりつつあるが、ポエカフェをこつこつと続けてきたことが大きな力となっているように参加者の一人として感じている。

 今回も、新しい方が何人もおられた。中にはネット検索でたどり着いた方がいる。日頃の発信の成果だろう。さらに今回は、ほんとうに久しぶりの方もおられた。このような方が、この場の広がりを支えているのだなと、あらためて思う。

 さて、今回のポエカフェ、いつもの通りPippoさんの自己紹介を皮切りに、参加者の自己紹介が続く。初めての方たちからは、若干の緊張が伝わってくる。恒例の朗読くじが配られ、取り上げられた新美南吉の生涯をPippoさんが紹介しつつ、くじであたった詩や童話を参加者が朗読していくのは、いつもの通り。そんな中で、初めての方の緊張もしだいにほぐれていく。

 初めて会場を提供してくださった「あぶくり」さんの雰囲気もよく、特製フードの「抹茶のシフォンケーキ」を美味しく、若干体調が悪かったわたし自身も、いつのまにか元気をもらっている。

 特別に盛り上げるようなしかけがあるわけではない、いつも通りのPippoさんの進行。でも、それが心地よい。Pippoさんの進行の中に、緊張を解くマジックがあるかのようだ。初めての方も含めて、参加者同士のやりとりも自然に生まれていく。このような場、つりたくて作れるものではないだけに、とても貴重だ。そんな中にいられる心地よさも、私が参加し続けている一つの理由だろう。

 ところで、今回取り上げられた詩人は、新美南吉。詩人としても「ごんぎつね」を始めとする童話作家としての方が有名だろう。それでも最近は埋もれかけているのが実情のようだ。今回の参加者の中にも、初めてという方がおられたし、保育士である妻に聞いても、最近は取り上げられることも少なくなっているようだと言われた。

 私も、詩人としての新美南吉は、ほぼ初めての経験。すでにアンケートの回答にも書いたが、どれか一つの作品が強い印象を残すと言うより、童話も含めて紹介された作品を前にして、南吉の作品の底に流れるものが、ことさら気にかかっている。もちろん、他の詩人でも、このような関心は起きるのだが、南吉の場合、それがとても前面にでてきている。

 ポエカフェを終わっての帰路、ある方から、八木重吉に似ているところがあるようにも思うというようなことを言われた。それを聞いたとたん、一瞬ドキッとした。実は、ポエカフェ前に少しは予習と思い、詩を読んでいたとき、どの詩かは覚えていなのだが、そんな感覚がよぎったことがあるからだ。

 八木重吉好きの私としては、なんなのだろうと思っていた。作品をいろいろと見ていくとき、必ずしも似ているものばかりではないだろう。そのことを言った方は、かなり読んでいる方だけに、作品の見た目を越えて、何か共通するものを感じさせるところがあるのかもしれない。

その後も、このことが気になっていた。悲しい結末をもつ童話の例も、何かあるのかと考えていた。正確な記憶ではないが、別の方は、救いがないように思えるというようなことも言われた。生きることの悲しさを提示したところで、その先がないと。

若くして病を得、死を意識せざるをえない状況におかれていた南吉。継母との確執もある。決して恵まれた状況にいない南吉だが、一人の人間として生きていこうとする姿勢が、おかれた状況の向こうに何かを求める、いわば求道者の色を加えているのかと、今は考えている。その点が、信仰者としての重吉と重なる部分を感じさせるのかもしれない。

 南吉が死を前にして原稿を託した巽聖歌は「南吉はおさないときからの忍従生活によって人一倍おどおどしデリケートに頭が働いた。それが詩人にもし、童話作家にもしているのだ」と書いているが、それは南吉にとっての戦いを指し示しているだろう。もし「救いがない」と感じさせるところがあるとしたら、その戦いの過程がそのまま作人に反映しているからかもしれないという印象を、いまのところ受けている。

 この印象は、まったく的外れかもしれない。しかし、何かのきっかけにはなるのではないかと思っている。興味が尽きない作家に、今回も出会ってしまった。

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