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「邪宗門秘曲から」 ポエトリーカフェ参加の記 第4期の5(北原白秋)

「われは思う、末世の邪宗、切支丹でうすの魔法。/黒船の加比丹を、紅毛の不可思議國を、/色赤きびいどろを、匂鋭きあんじやべいいる、/南蛮の棧留縞を、はた、阿刺吉、珍酡の酒を。/」(『邪宗門秘曲』冒頭)


 南蛮趣味にあふれる『邪宗門秘曲』ではじまる『邪宗門』によって、明治42年(1909)年、北原白秋は、詩歌壇に驚きと賞賛の念をもって迎えられたという。赤地に金文字、天金をほどこされたその装釘もまた華やかなものであった。復刻版で見ただけだが、その印象はとても強い。


 9月22日に開催されたポエカフェの課題詩人は、この白秋。後には多くの童謡も作り、むしろそちらの方面で知られているかもしれない北原白秋。いっしょに参加したつれあいのアンジーは、童謡のイメージががほとんどとのこと。伝説の第1回のポエカフェで取り上げられ、さらには2年近く前にリターンズとしても取り上げられた北原白秋。それでも、まだまだと思われたのか、3度目の登場となった。


 ここのところ、Pippoさんが大好きな『パンの會』にまつわる詩人が取り上げられて来たが、北原白秋も、それに該当。今回も『パンの會』の資料が配られたが、何部も持っている者は、それを使って知らない人に伝えるようにとの指令まで飛び出した。


 会場は久しぶりの神田・伯剌西爾。第1期の萩原恭二郎篇がなつかしい。新しい方も交えて、恒例の自己紹介から始まる。この時間、ポエカフェにとって、けっこう大切な時間だ。参加者ひとりひとりの声が聞こえ、初めての方も、自然に会の雰囲気に巻き込まれ(?)ていく。そして、これまた恒例の「朗読くじ」。今回は、くじが少しあまったので、二つ読む機会を得た。一つは、先にひいた『邪宗門秘曲』から、最初の3連。もう一つは、詩集『新頌』から、「十三時半の風景」。いずれもリターンズで取り上げられたいた詩。特に「十三時半の風景」は印象に残っている詩だった。


 「根があった。/高梁の枯れた畝竝、/黄色い土、/積み竝べた土糞、/ああ、それだけ。//木があった、ひとつひとつに、/影を落とした枯木であった。/ああ、それだけ。//…」と始まる。二つの詩の間には40年近い歳月が経過している。満州(今の中国東北地方)を舞台とした詩。「ああ、それだけ」という詩句が各連のさいごに繰り返される。『邪宗門秘曲』とはまったくことなる世界がそこに広がる。使われている日本語も全く違う。きらびやかさはなく、黄色い土の風が吹く乾いた世界がそこに感じられる。


 リターンズの時のアンケートには、「十三時半の風景」については触れなかったが、邪宗門秘曲について「白秋が、この世界をもっと深めて行ったらどうなったのかと思います。」と書いた。今もその思いはあるが、後期の作品に、より興味がわいてきている。姦通罪で訴えられ、人生の大きな転機を経た白秋。童謡を数多く作った白秋。今回は取り上げられていないが、『新頌』には「海道東征」という建国神話に基づいた作品までもある。


 晩年まで創作意欲は衰えなかったという白秋。短歌や、散文も含め作品の数も多く、岩波書店版の白秋全集は全40巻にもなる。しかも白秋の門下には、萩原朔太郎や、室生犀星、大手拓次がいる。萩原朔太郎の『月に吠える』には「序」を書いているが、朔太郎への愛情溢れるものとなっている。今回のポエカフェの資料にも、これらが紹介されたが、白秋の影響の大きさが、そこに見える。


 ポエカフェに3度取り上げられたのは北原白秋だけだが、Pippoさん、まだまだ語り足りないのではないだろうか。開催前には、「もうしばらくやりません」とおっしゃていたが、またの機会があるのではと、いや、あってほしいと思っている。


 最後にポエカフェ終了後に、思いがけない出来事があった。国立国会図書館の「れきおん」という歴史的音源を公開しているサイトがあるが、そこで公開されている音源に北原白秋が含まれていたのだ。『思ひ出』の「序詩」や「断章」が本人の朗読で聞ける。特に「断章」の朗読には驚かされた。サイトはこちら。ポエカフェ前に聞いていたらと思うと、残念なのだが、次の機会での楽しみとしたい。

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