« 「作品の魅力とともに」 ポエトリーカフェ参加の記 第5期の2(石川啄木) | トップページ | 「行乞の中から」 ポエトリーカフェ参加の記 第5期の4(種田山頭火) »

「作り続ける中で」 ポエトリーカフェ参加の記 第5期の3(尾崎放哉)

 今から18年前のこと、お世話になっている恩師から、一人の俳人を紹介された。それが荻原井泉水。日本語における表現についての話の中ではなかったかと思う。荻原井泉水の小さな本を貸していただいた。残念ながら、その書名は失念したが、そこから自由律俳句、そして尾崎放哉を知ることとなった。放哉の晩年の作品に大きな衝撃を受けた。日本語でのこのような限界ともいえる表現があるのかと。

 去る24日に開催されたPippoさん主催のポエカフェで取り上げられたのが尾崎放哉。連れ合いのアンジーと一緒に、会場の神田ぶらじるに向かった。夕方まで、スケジュールがきつかったので、かなり疲れてはいたのだが、放哉の回とあって、ワクワクしながら向かう。ちなみにアンジーは初放哉。

 今回も新しい方が何人かおられる。まずは恒例の自己紹介からはじまる。何回も参加しておられる方の自己紹介も、近況報告的なことも含め、これがけっこう楽しい。そして、Pippoさんからの自己紹介のお題が、「放哉と私」。放哉のことを知らない方の方が多い。また、教科書で知っているという人が何人かおられたが、これにはちょっとびっくり。私の頃は、掲載されていなかったと思うのだが、世代の違いか。

 Pippoさんからは、放哉の年譜と、作品の資料が配られる。記載された俳句の数が、とても多い。その数、なんと二百!そのせいもあって、朗読くじには、一枚当たり6~10句が記載されている。その中から2句えらんで朗読するのだが、選ぶのが大変、でも楽しい。

 選ばれた句は、鳥取県立第一中学時代から、死を迎える小豆島の南郷庵でのものまで、とても幅が広い。わたしがあたったのは、最初期の中学時代の句。「きれ凧の糸かかりけり梅の枝」「よき人の机によりて昼ねかな」を選んで朗読する。句のできは別として、放哉の目の付け所や、思いの向き方が、その後の放哉につながるような気がして選んだ。

 その朗読の中での参加者の方々の発言が、今回もとても興味深かった。書記の句について、こそっと「あまりよいとは思えない」というような声もあるかと思えば、作詞家松本隆の名前が出たりする。皆さんの声で印象に残ったものをメモしているのだが、「運命」「視点の転換」「スピード感」「モノトーン」といったものが、手許に残っている。 

 俳句の他にも「俺の記」や「入庵雑記」の一部も紹介された。今回あらためて、これら俳句以外の放哉の文章にも興味を惹かれた。紹介された句の多さもあいまって、予定時間を少しオーバー。放哉の句を中心に、充実した時間があっという間に過ぎ去った。

 今回、気になったことの一つに荻原井泉水との関係がある。小豆島に渡った放哉は、多数の句を友でありながら師匠として仰ぐ井泉水に送り続けていたという。送られた井泉水は、その句稿から主催していた句誌「層雲」に掲載するものを選んでいたという。時には添削して掲載する場合も少なくなかったようだ。俳句の世界では、それでも放哉のオリジナルとして扱われるという。放哉も、井泉水の添削にまったく信頼していたようだ。

 作り続ける中で、表現は研ぎすまされていった。放哉の句としておそらく最も有名な「咳をしても一人」に代表される、あまりにも短い句。しかし、そこには抜き差しならない言葉の密度を感じる。この句を読むとき「も」一文字に凝縮された放哉の生き様の重さを思ってしまう。

 小豆島の南郷庵での生活の中から生み出され、井泉水に送り続けられた放哉の俳句。放哉にとって、ほんとうに大事なものは何だったのだろう。女性との関係や、酒のこと、まるごとの放哉の生涯を考えさせられる。そして、放哉に取って生きるとは何だったのだろうと。簡単に答えの出る問いでは、もちろんないだろう。全集には書簡もおさめられている。俳句だけでなく、それらも含め、じっくりと読み直してみたい。

 最後に、紹介された句からどうしてか心に残る句を一つ。

 「春の山うしろから烟が出だした」

|

« 「作品の魅力とともに」 ポエトリーカフェ参加の記 第5期の2(石川啄木) | トップページ | 「行乞の中から」 ポエトリーカフェ参加の記 第5期の4(種田山頭火) »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/526399/60245542

この記事へのトラックバック一覧です: 「作り続ける中で」 ポエトリーカフェ参加の記 第5期の3(尾崎放哉):

« 「作品の魅力とともに」 ポエトリーカフェ参加の記 第5期の2(石川啄木) | トップページ | 「行乞の中から」 ポエトリーカフェ参加の記 第5期の4(種田山頭火) »