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「美しき空っぽに魅せられて」 ポエトリーカフェ参加の記 第7期の2 (吉井勇篇)

 今年最後のポエカフェは久しぶりの吉井勇でした。Pippoさんの大好きな『パンの會』の中心メンバーの一人です。パリのサロンのようなものを日本でもと始められた『パンの會』。その代表人物の一人とも言える吉井勇。歌集を30冊も残し、1960年まで生のある限り作歌を続けた吉井勇です。『パンの會』に関わる詩人・歌人としては北原白秋や木下杢太郎が既に何回か取り上げられていますが、吉井勇は2回目です。

 体調を崩した方の急なキャンセルもあり、いつもより少し少ない人数でしたが、ポエカフェの雰囲気はいつもと変わらず、参加者を包んでいきます。伯剌西爾さんの用意してくださったお菓子も美味しく、参加者の方々の朗読や感想を聞いているうちに、時間は今回もアッと言う間に過ぎ去って行きました。

 15歳から最晩年までの作品群からPippoさんが厳選した135首が資料に並んでいます。朗読くじには、5~10首くらいが並んでいます。そのなかから選んで朗読です。ちょっと自分の感性が試される?気分もあります。

 ここまで書いてきて、吉井勇の素晴らしさ、心に残ることをどう表していいかわからない自分に気がつきました。決して作品がつまらなかったり、得ることがなかったりというのではありません。、むしろその正反対なのです。今回のポエカフェが終わって、数年前からの『短歌研究』に細川光洋氏の『吉井勇の旅鞄』という連載があったことを知り、クリスマスで忙しい時期でしたが、隣市の図書館で掲載誌を漁るという行動に駆り立てられています。(今年の11月号にも特集があります)

 前回取り上げられた時も、気になる人物ではありましたが、今回ほどではありませんでした。吉井勇の句を評する言葉として、「美しきからっぽ」という言葉が紹介されました。たしかに私が朗読くじで当たった『酒ほがい』所収の歌など、その代表格かもしれません。「わが胸の鼓の響きたうたらりたうたうたらり酔えば楽しき」という歌が紹介されていました。たうたらりの繰り返しが残ります。「いくたりの男のために取られたる手かは知らねど我も取りたる」勇がとった手の相手はどのような女性でしょうか。母音の「お」と「う」が想像と思いの世界を作っているように感じます。しかし、歌われている世界について、「それがどうした」と言われれば、答えに窮するのではないでしょうか。

 吉井勇の素晴らしさのひとつとして思い当たるのは、日本語としての音の、特に母音の扱いのような気がしています。予習を兼ねて全歌集を読んでいたのですが、途中からふと、字を追っていくのではなく、音読、ないし心の中で音を響かせながら読むようにしてみました。そうしてみると、不思議と歌が入ってくるように感じるのです。短歌の定型を崩すような歌はありません。突拍子もない表現もありません。しかし、音を、しかも句の切れ目を意識しつつ、少し伸ばすように読んでいくと心地よいのです。(昔聞いた百人一首の読み方を思い出しながらです。朗読の時、そのような読み方でとも思いチャレンジしましたが、うまくいきませんでした。)吉井勇の句を評する言葉として、「美しきからっぽ」という言葉が紹介されました。その「美しさ」の一端を垣間見たように思うのです。若い頃の酒に溺れ、花街に遊んだ頃の句も、流浪の旅の中で読んだ句も、その点では変わりないように感じます。

 「京に老ゆ」で始まる連作もそうですが、紹介されていた中でもすごいのが『天彦』に収録されている「寂しければ」に始まる連作です。実に72首もあるのです。全歌集でこれを目にした時、圧倒されました。今回の資料には8首が載せられていましたが、同じ言葉で始まりながら、これだけの数を詠める勇の世界の広がりが伝わってきます。それでも日本語としての音の美しさの中に収められています。おそらく吉井勇の日本語における音に魅せられたとも言えるかもしれませんが、もちろん、音だけでもないのです。

 戦後も活躍し続け、宮中の歌会の選者にまでなっている吉井勇。高らかに思想を込めることなく、美しき空っぽの世界を表に出しながら、気がつくと奥深い世界に取り込まれているように感じています。日本語の表現者として、まだまだ、追っかけ続けたくなる歌人と思っています。

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