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「リアリティを求めて」 ポエトリーカフェ参加の記 第7期の6 (尾形亀之助篇)

 先月26日に開催されたポエカフェで取り上げられてのは尾形亀之助。仙台での1回を含めて4回目の登場です。私は今回が2回目ですが、前回の参加時のブログで、亀之助の詩を読んで感じたことについて「言語化すること自体を亀之助の詩が拒んでいるのかもしれない。かんたんに言語化して意味など与えないでくれと」書いている。それでも心にかかる詩人なのです。その後読み続けることはしていませんでした。自分の内の何かが反応している感じがありました。引き込まれそうな予感とともに、そうなったらまずいかもという感じがあったからかもしれません。しかし、夏葉社さんから「美しい街」が刊行されたこともあり、買って読み始めていました。期待と不安?の入り混じった中での参加でした。

 連れ合いのアンジーと一緒に会場の神田伯剌西爾さんに着くとPippoさんが資料の整理中です。アンジーと一緒に手伝います。第1期の頃から変わらないこのこの手作り感もポエカフェの良さです。長く続くと、それなりの固定感も出やすいと思うのですが、そうならないのがポエカフェの不思議な魅力でしょう。今回も数名の新しい方を含めて、ゆったりと自己紹介から開始です。

 今回も恒例の朗読くじがあります。短いのやら、散文詩の長いのやら入り混じっています。くじではありますが、希望によって交換可能なところもポエカフェならではかもしれません。長いのは避けられがちでした。私は、いきおいで引いたところ、なんと最後の詩集『障子のある家』の「後記」の中の「父と母へ」でした。同じ「後記」にある自分の子どもへの「泉ちゃんと猟坊へ」とともに大好きなものです。ちなみに「泉ちゃんと猟坊へ」は夏葉社さんの「美しい街」にも収められています。

 『障子のある家』はたった70部だけ刊行された亀之助最後の詩集です。その自序には「何らの自己の、地上の権利を持たぬ私は第一に全くの住所不定へ。それからその次へ。~」と始まります。「その次へ」をどう取るかが亀之助を理解する上で、大きな分かれ道になるような気がしています。

 それにしても、これを引くとはと驚きでした。というのも、この「父と母へ」に関して前回のブログでも取り上げていて、その最初の部分「さよなら。なんとなくお気の毒です。親であるあなたも、その子である私にも、生んだり生まれたりしたことに就てたいした自信がないのです。」を引用しつつ「そこには、現代的な問いが含まれていると思うのは、私の勝手な思い込みかもしれないが…。」と書いたからです。

 今回の参加にあたり、亀之助の生涯を詳しく調査した秋本潔氏の『評伝 尾形亀之助』を読みかけていました。亀之助の生家の背景も詳しく調べられています。そこを読む中で、亀之助の成長過程と作品との結びつきを考えざるを得ないように思ってきています。特に11歳で喘息の治療のためとは言え、親から離れた鎌倉での生活や、その後の東京での生活も気にかかります。ポエカフェでいろいろな詩人に出会ってきましたが、尾形亀之助ほど成長過程と作品が結びついている詩人は内容に感じています。

 先に引用した中の「生んだり生まれたりしたことに就てたいした自信がないのです」という箇所は、亀之助の社会に対する向き合い方に決定的な影響を与えていたのではないかといったら考えすぎでしょうか。無為としか見えない暮らしの中で、自分にとってのリアリティーを探し求めつづけたのが亀之助だったのではと思うのです。それは、目の前の暮らしより、存在の本質へと向かわざるを得なくさせたのではないかと思うのです。

 作品への「浮遊感」という評も聞かれましたし、「ボンボン」という評もありました。そう言われてもしょうがない生き方でしょう。しかし、作品の底に流れる言語化を拒むような感覚にこそ亀之助の本質が隠されてるように感じるのです。亀之助のこんなところに、どうやら惹かれているようです。そうすると、私自身、かなり危なっかしい存在ということになるかもしれませんが…。

追記1:『障子のある家』に収められた「おまけ 滑稽無声映画「形のない国」の梗概」も好きな作品です。

追記2:亀之助の生涯については、今回も古書ますく堂さんのブログ「古書ますく堂の、なまけもの日記」を参照してください。

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