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「ひとりの女性として」 ポエトリーカフェ参加の記 第8期の2(新川和江篇)

 12/17に開催された第101回ポエカフェ。記念すべき100回目には、仕事の都合で参加できず涙にくれていた私と連れ合いのアンジーはひさしぶりのポエカフェに心弾ませながら向かったのでした。

 今回の課題詩人は新川和江さん。吉原幸子さん以来の女性詩人ですが、その時のアンケートで吉原さんに投票すると同時に、アンケート対象にはなっていなかった新川さんのお名前もあげたのでした。新川さん、いつか取り上げてもらえたらいいなと思っていた私にとっては、わくわく感が更に募ります。

 新川さんは1929年のお生まれですが、88歳の今も活躍しておられます。ポエカフェ史上、数少ないご存命の詩人です。生涯に着いては今回も古書ますく堂さんがブログでうまくまとめてくださっていますので、是非、ご参照いただければと思います。

 新しい方もおられる中、いつも通り自己紹介で始まります。新川さんは初めて、あまり知らないという方も、少なからずおられ、Pippoさんはちょっとびっくり。もう一つ恒例の朗読くじも回ります。「くじ」と言っても交換可能です。引き終わったあとは、暫し交換タイム。気がつけば私の手には今回の資料の中で一番長い「扉」がありました。

 1959年の『絵本「永遠」』という詩集におさめられた詩です。6連、55行の長さです。26歳で長男の博さんを出産した新川さん30歳の時の詩集です。博さんと思われる子どもとの間の関係が描かれています。「締切日が近づくと/わたしはますます無口になり/仕事部屋をくらい海底のように澱ませて/岩かげに終日ひっそりと魚鱗を光らせたいたりした/するとおまえは/幼い足どりで廊下をつたって来ては/かたくなに閉ざされた扉の前に立ち止まり/飽くことのない情熱で母の名を呼びたてるのだ/ママ! ママ! ママ!」これが1連目です。

 ある日、一日子どもの相手をしたとき、ふいに玩具を放りだして不在の書斎の前で「ママ! ママ! ママ!」と呼ぶ子ども。子どもに向かって「わたしよ! わたしよ! わたしよ!」と叫ぶ「わたし」。

 じつは、初期の詩の中でとても印象に残っていた詩でした。子どもの叫ぶ声が聞こえてくるのです。母としての葛藤を抱えながら仕事をしている「わたし」最終連に込められた「わたし」の思い。長いだけでも大変なのに、ことばが心にのしかかってくるように感じます。そんな中での朗読となりました。朗読後の感想でもお話ししましたが、男性の私の中で、とても揺さぶられるものがあるのです。同時に叫ぶ子どもの声も聞こえてくるようです。二人が求めているものが心を揺らすのでしょうか。圧倒されるような「重さ」と同時に、母という立場で書きながら、それを超えているものを感じます。

 ところで、今になって気になることがあるのです。この「書斎」、ほんとうに具体的な部屋だったのでしょうか。子どもにとって詩を書いている母は「書斎」にこもっているのと同じだったのかもしれないのかなと。きっかけは『土へのオード 13』におさめられた「九月の第一月曜日」という詩です。そこには書き損じの原稿用紙を飛ばす「小さな息子」が出てくるのです。

 今回のポエカフェ、いつにも増してみなさんの発言が活発だったように思います。「千度呼べば」ではドリカムも引き合いに出されました。様々な受け取り方が引き出されていって時間はあっというまに過ぎ去っていきます。時にはドリカムのような感じを与えながら、読む人を引き込んでいく新川さんのように感じていました。女性詩人でも、これまで取り上げられてきた石垣りんさん、茨木のり子さん、吉原幸子さんとも異なる何かがあります。

 ポエカフェから既に1週間以上たちました。読み続けています。その中で改めて感じていることを少しだけ記しておきます。ひとりの女性として、女性性を真っ正面から受け止め、その上でひとりの人間として生き続けようとした方なのかと感じています。新川さんが求め続けたものは何だったのでしょうか。観念でなく、手触りのあるものとしての「いのち」と向き合い続けた新川さんだったのかなと感想は広がっていっています。性別を超えて訴えてくるものを強く感じながら読んでいます。

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