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「詩だけでなく」 ポエトリーカフェ参加の記 第8期の7(小熊秀雄篇)

 だいぶ遅くなりましたが、7月22日に開催されたポエカフェ小熊秀雄篇の参加記を記しておきます。小熊秀雄(1901~1940)は、現在どれほど知られているのでしょうか。ポエカフェでは2012年に取り上げられて以来、6年ぶりの登場です。

 猛暑に負けない秀雄の熱気あふれる資料をPippoさんが用意してくださっています。テキスト資料がなんと8枚です。作品に長いものが多いのも確かですが、「しゃべりまくれ!」と言った詩人にふさわしい資料でしょう。そのせいもあって?か、あっという間に終了時間が迫ってきていました。Pippoさんも「まだ話し足りない」とtwiterで書いておられました。それでも、参加された方々のツイートにも、小熊秀雄の熱がしっかりと伝わっていたように思います。

 今回、朗読くじで引いたのは童話の「焼かれた魚(魚)」と文壇風刺詩篇の中から「室生犀星へ」でした。「焼かれた魚」は秀雄が旭川新聞の記者をしていた時のものです。この頃、記者としての活動だけでなく、童話も書いています。童話を書いただけでなく、子どもたちに童話を口演し「小熊の小父さん」と慕われていたそうです。詩だけでなく、童話にも心を傾けていた秀雄が、そこに何を求めていたかが、とても気になっています。作品自体は、前回の時に読んで、秀雄の作品の中でも大好きな者の一つです。感想を話しているうつに、結末まで触れてしまったのには、読んでいない方への申し訳なさもありましたが、この作品、結末なしには感想を言えない作品なのです。登場する様々な小動物たちに何を見るかという視点もあるのはもちろんですが、その点を含めての結末が迫ってきます。あの時代、このような作品を童話として完成した秀雄の力に打たれます。

 後に、プロレタリア詩人として活動する事になる秀雄です。「しゃべり捲れ」と過剰なまでのエネルギーをぶつける詩が書かれています。読む者にもエネルギーを要求する詩に思えます。それでも、小熊秀雄の詩はアジテーションの羅列になっていかないのです。小熊の社会主義観、プロレタリア詩観が、どのような変遷を辿ったかもとても気になるところです。

 長編叙事詩集『飛ぶ橇』に収録された作品がとても気になっています。今回の資料には「移民通信」の一部が取られていました。通信の発信者は満州へ向かう移民となったルンペンという形をとっています。その中に、巧みに社会観や労働観、人間観が埋め込まれているようです。社会の最下層にいる人間の目を通して語られる物語とも言えるこの詩に惹かれます。また、今回取り上げられてはいませんでしたが、「空の脱走者」「飛ぶ橇」も以前から、とても気にかかっている作品です。小熊秀雄が長生きしてこのような長編叙事詩を書き続けていてくれたらどんな世界が広がっていたのだろうと思わざるを得ません。

 これらの長編叙事詩に表されている教条的でない小熊秀雄の人間観の底に何があるのだろうかと考えさせられています。社会の最底辺に置かれた人々への目や、大きな力の中で一人の人間として生きて行こうとする人への眼差しに、プロレタリア詩人という枠に収まらない小熊秀雄がいるように思います。

 それにしても、小熊秀雄の才能の幅広さには驚かされます。絵画作品も見逃せません。漫画の原作までも手がけています。それも後のマンガ家に大きな影響を与えたということです。39歳で亡くなったことが惜しまれてなりません。

 最後になりますが、今回、改めて資料を見て、家庭環境や旭川新聞時代の秀雄に目がいきました。小熊秀雄の作品には、その時代の精神形成が大きな影響を与えているのではということがあるのです。父親の戸籍に入れてもらえなかったり、激しい気性の継母との関係。異父姉ハツとの関係。どれをとっても並大抵のことではないでしょう。

 それと旭川時代にはプロレタリア詩人今野大力との出会いもあります。この二人の関係も大いに気になります。今野大力の作品集もあることですし、小熊秀雄と合わせてじっくり読んでみたいと思っています。

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