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2018年10月

「密度と香りの中に」 ポエトリーカフェ参加の記 第8期の8(大手拓次篇)

 だいぶ遅くなりましたが、9/16に開催されたポエカフェ大手拓次篇の参加記を残しておきます。ポエカフェ翌日には古書ますく堂さんが拓次の生涯も含めて今回もブログに楽しくまとめてくださっていますので、今更とは思いますが、お付き合いください。

 大手拓次が取り上げられるのは2012年5月に続いて2回目になります。(前回の参加記はこちら)前回は参加された方々から「とにかくかゆい!!」「アリが全身を這っているようだ」「くどい」「しつこい」「分かったから!」「お腹一杯!!」という声が飛び出した拓次。前回も参加されていた方は、私の他にはお二人だけ?ですが、今回はどのような感想が飛び出すのだろうと期待しつつの参加です。

 北原白秋と萩原朔太郎によって作られた「伝説」に長い間包まれていた大手拓次。今夏に復刊された原子朗編岩波文庫版の編者による「解説」で、伝説と拓次の実像が異なることが指摘されていますので、伝説からは解放されているようですが、拓次の詩の世界の独特さは変わることなく、読む者に様々な反応を引き起さずにはいられないようです。前回に劣らず皆さんの感想が飛び交ったせいでしょうか、今回も気がつけば終わりの時刻が迫っていました。

 2400篇と言われる膨大な作品を残した拓次。室生犀星、萩原朔太郎とともに白秋の三羽烏と言われるにも関わらず、生前には1冊の詩集も出せなかった拓次。真面目な勤め人という側面をも併せ持つ拓次。社交的でなかった拓次。47歳で亡くなった拓次。拓次の生涯は、様々な事を考えさせます。

 伝説からは解放されたといっても、香りが大好きで、多くの香料を集め部屋においていたという拓次にふさわしく、彼の作品世界からは、あまりにも独特な香りが匂い立ってきます。今回の資料に挙げられた作品は初期詩篇から昭和7年の作品に加えて翻訳もあります。

 そんな中で朗読くじで引き当てたのは「香水の表情に就いて~漫談的無駄話~」抄でした。拓次が勤めていたライオン歯磨の広報誌に掲載されたもののようです。くじには他の詩もあって選ぶようになっていましたが、敢えてこれを朗読しました。香水大好きな拓次による25種の「感じ」が挙げられています。それを鍵にして香水を選ぶようにという文なのですが、香水にこれだけの「感じ」を当てあめられるのは驚異の一言です。この25種の「感じ」は、青空文庫にこの作品が所収されていますので、ご覧になることをおすすめしておきます。それにしても、香水の「感じ」にこれだけの表現を与える感性の豊かさに圧倒されます。しかも図解付きです!これあればこその拓次の詩ではと思い、これを選びました。

 今回の資料も含めて、拓次の詩を読んで行くときに感じるのは言葉の密度の高さです。その密度の前に私は怯んでしまうこともありました。読む者を惹きつけると同時に、その密度のゆえに拒む言葉ともなっているように思うのです。

 ポエカフェ前、ポエカフェ後、拓次の詩を読み続けています。いまも、出かけるときには原子朗編の岩波文庫版の詩集を入れています。読みながら、ときにメモをとっています。そこから一部を書き写します。

「官能的言葉の密度。彼の言葉の住人とはなれない。外から彼の世界を恐々と覗くだけ。」

「音・光・熱の重層する世界」

「漢字のつながり、ひらがなの惑わし」

共通するのは、濃密な言葉が産み出す世界に戸惑っている私です。

 その濃密な世界がときに、前回のときに言われた「かゆい」というような言葉に繋がるのかも知れません。真面目に勤め人としての日々を過ごしていた拓次にとって、自らの産み出す詩の世界こそがリアルな世界だったのではとも思います。岩波文庫の編者解説にも「詩は不抜のとりでだった」とありますが、読み進めるにつれ、その感が増しこそすれ減ることはありませんでした。

 拒まれるように感じながらも、離れられなくなっています。口語自由詩が作られるようになった、ごく初期に、これだけの言葉を駆使して詩を作り続けた拓次に、もっと光が当てられたらと思いながら読んでいます。

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