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「情景の中で」ポエトリーカフェ参加の記 第9期の7(ポール・エリュアール篇)

 「学校のノートの上/勉強机や木立の上/砂の上 雪の上に/君の名を書く//読んだページの上/まだ白いページ全部の上に/石 血 紙 または灰に/君の名を書く//….」21連からなるポール・エリュアールの詩『自由』(安藤元雄訳)の冒頭の部分です。9/22に神田伯剌西爾で開催されたポエカフェ第119回はフランスの詩人、ポール・エリュアールでした。今回も楽しくも豊かな時間があっという間に過ぎ去って行きましたが、その中での白眉とも言えるのが、この『自由』を参加者みんなで分けて朗読したことでしょう。

 配布された資料の中に、いつも通り番号が付けられて詩が並びます。朗読くじで当たった詩を読むのはいつも通りです。しかし『自由』はA~Nの記号が振られています。1連ないし2連に分けられています。どこか選んで読むのかなと、それにしては一つが短いなと思っていたら、みんなで続けて朗読するというのです。Pippoさん、面白いことを考えたなと、興味が膨らみます。そして、皆で朗読したの結果は、それそれの個性もありながら、不思議と一つのまとまりが出てくる、面白くも素晴らしいものとなりました。

 ところで、この『自由』という詩は、クロード・ゴワランという方の絵で絵本になっています。訳者はこやま峰子さん。ポエカフェの予習のつもりで図書館を調べていたら、この絵本に出会いました。『自由』という詩は各連の最後が「君の名 を書く」になっています。そして最後の連は「一つの言葉の力によって/僕の人生は再び始まる/僕の生まれたのは 君と知り合うため/君を名ざすためだった//自由 と」となっています。絵本は左のページに詩、右のページに絵という構成ですが、「君の名を書く」が各左ページにフォントを変えて(時には手書き?)“J’écris ton nom”と置かれています。絵と相まって、とても印象に残ります。この絵本に出会えたのも、ポエカフェの大きな収穫でした。

 第二次対戦中に出された小詩集『詩と真実』に入っている詩です。ドイツの占領に抵抗する市民の愛読書になったということです。『自由』の貴重さが迫ってきます。

 さて、朗読くじで引き当てて読んだのは1921年刊行の『人生の必要事項と夢の諸結果』から「『大いなる日』 ガラに」と1929年刊行の『愛、詩』から(雲々のために ぼくはきみにそう言った)の二篇でした。ともに妻ガラにささげられた詩です。どちらもガラへの想いのこもった詩と言えるでしょうが、個人的には「大いなる日」の方が印象に残りました。「おいで、昇っておいで。やがてこの上なく 軽やかな羽毛が、空中の潜水夫よ、おまえの首根っ子を掴むだろう。この部分だけで、視界が広がります。「空中の潜水夫」という言葉が、印象的です。エリュアールはどこにいるのだろうということが話題になりました。私としては、空中でガラを待っているのではと思っていますが、いかがでしょうか。

 エリュアールの生涯については古書ますく堂さんがブログでとてもわかりやすくまとめてくださっていますので、そちらをご覧いただきたいのですが、ブルトンとともにシュルレアリスムの旗手として進んでいった時期。ガラにささげた詩のように愛をうたった詩。占領下のフランスでドイツに抵抗したエリュアール。様々な表情を見せてくれるエリュアール。

 それでも、エリュアールの詩は、それぞれに情景を浮かび上がらせてくれるのです。時にシュルレアリスムの風景を、時に抵抗者の姿勢を、詩の言葉が一つ一つでも一緒になっても、イメージを喚起してくれます。

 そのような彼の詩の力は、『自由』のような詩にあっても、豊かさをもって迫ってくるように思えるのです。それは、痛みをも伴いながらなのですが…。ここのところ忙しくて、なかなかエリュアールの詩を追いかけられなかったのですが、少しづつ読んでいます。その中での発見は小沢書店の『エリュアール詩集』(宇佐美斉 編・約)に入れられている、「詩の明証性」です。シュルレアリスムの時代のエリュアールの詩論ですが、とても興味深く読んでいます。

 

 

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